幼稚園の発表会などを撮影していると、業務用ビデオカメラに興味があるお父さんやお爺ちゃんにお声をかけられます。
一番多いのは「このカメラはいくらぐらいするの?」(ボディが大きいですからね。)
「記録方式はなんですか?」などなど。
皆さんがお使いの民生機とどう違うのか。プロはやはり撮影にコストがかかります。
そして、完成DVDは安くありません。
今回はちょっとマニアックですが、プロが使うビデオカメラの特性と民生機との違いを紹介します。

1) 業務用って?


車にたとえると、ポルシェがあります。その中でも特殊な「レース用車両」といってナンバーが取れない(公道を走れない)特殊な車両があります。
そのレーシングカーにはカーオーディオや速度計がついていないのですが、それと同じように、業務用ビデオカメラにはオートフォーカスがついてなかったり、マイクがついてなかったり、カラー液晶パネルがついてなかったりと、一般の人が使うのに便利な機能がなく、誰でも使えるとはなりません。また、レーシングカーがポルシェのディーラーに行っても売っていないように、業務用カメラは家電屋さんでは買えません。(まず値段が桁違いですが・・・)
そのカメラの価格ですが、小型機とよばれるもので、30万円から80万円くらい。
TVでもよく見かける、カメラマンが持っている大きなカメラは150万円から700万円くらい。映画やCMで使うものは1000万円以上になりますが、ある意味これは安いほう。プロ機ってマイクとレンズ、場合によっては記録媒体(昔でいうVTR)がバラバラでこれを別で買わなくていけません。
また、カメラの大きさに合わせて使用する三脚が高い!小さいカメラ用だと10万円程度ですが、上のクラスにいくと100万円近くなるので、以外と三脚の価格の高さには驚きです!!

 

2) 画質は?

もちろん、良いといえば良いのですが、民生機との一番の違いは感度、明るさです。
カメラというのは撮像素子(MOSセンサー)の大きさでほぼ明るさが決まります。
民生機でも暗いところは撮れるのですが、それは「ゲインアップ」という電子的な処理で明るくしているので、映像は荒れてしまう。プロはそれを避けるためにカメラ自体を高感度にするため、大きくなってしまうのですね。

さて、皆さん気になる画素数ですが、実は業務機の画素数はそれほどありません。フルハイビジョン(1920px×1080px)は一部機種だけ。民生機は現在ほぼフルハイビジョンですが、放送収録のスタンダードであるHDCAM方式は(1440px×1080px)、DVCPRO-HD方式は1280px×1080px)という具合に、以外と高くありません。まだテープ収録が多いのも原因があるのでしょうが、この点は民生機の方が数字は高いです。

 

3) 音は?


先ほど書きましたが、そもそもカメラにマイクがついていません。
民生機では、撮影すると必ず音も収録できますが、プロ機はマイクを別に買ってきて、キチンと設定しないと音がまったく撮れてないという恐ろしい自体になります。
(実際設定に失敗して音がまったく入っていなかったという会社さんの話も聞きます)
また、収録方式はモノラルが基本です。民生機ではステレオが基本で、最近は5.1チャンネル対応なんてのもありますから、この点も違いますね。
発表会なんかでは子供の声をよく拾い、客席のノイズを抑えるためにマイクを前に出したりしますが、カメラから長いキャノンケーブルで引っ張ったりしています。
こういう用途に対応できるように、音声入力がキャノン(XLR)端子になっているところが民生機との大きな違いとなります。

 

4) 記録方式は?

現在民生機はHDDとSDカードがメインになり、テープ記録はあまり見られなくなりました。ところが、業務用はまだまだテープが主流です。TVの取材はSONY機が多く(SONYさんはテープ機が多い)HDCAMという大型機(昔のベータテープにデジタル記録)とHDVという小型機(昔のDVテープにデジタル記録)が主流です。
放送では撮影した素材(アーカイブ)をとっておくという使命もあるし、いまだにコンピューター編集ではなく、テープ同士の編集もあるから運用が楽なんですね。
(ニュース素材やドラマの本編集はテープ編集が多いです)

我々幼稚園保育園の撮影では、テープとメディアのハイブリッドです。カメラによってテープだったり、半導体メディアだったり、バックアップが別々だったり。
そうそう、発表会やお遊戯会での撮影では、カメラ1台につきテープを回すのではなく、そのカメラの映像をさらに別のメディアで2重に収録します。万が一、カメラのVTRにトラブルが起きて撮れていなかった場合、もう一度発表会をやってくださいとはお願いできません。だから慎重を期してバックアップというシステムを使います。
最新の業務用カメラには、カメラ1台に2つのメディアに記録してバックアップシステムがカメラ内部にあるものもあります。これは素晴らしい!

 

(まとめ)

業務用カメラって高い。扱いづらい。その割に民生機より遅れている点もある。
一番は安定性と堅牢さ。お金をいただいて撮影するので、失敗が許されないところが一番大切なんですね。
現在、弊社の幼稚園・保育園の納品メディアはDVDのみ。元の素材からかなり画質が落ちて納品となります。
はっきりいってお父さんの民生機をそのままTVに写したほうがキレイです。高い業務用ビデオなのにDVDだからあまり画質よくないなあというのが現状です。はやくブルーレイ化して本来の画質でお届けしたいのですが、これまた十分な検証と技術向上まで少々年数がかかります。

とはいえ、業務用の安定性でこれからも失敗のないように、お子様のきらめきの一瞬を撮影しなくてはいけないと、改めて再認識しました。

この記事を書いた人

店長
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映像制作その他メディア制作
こどものためのメディアにかかわり20年以上
毎年こどもにいろんな事を教えてもらう日々

■ 好きなものごと・・・こどもが笑っているとこ
■苦手なものごと・・・人のもめごと、戦争
■ 趣味・・・自然と戯れる・ドライブ

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